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プリモ動物病院×ミライ

布村順一:株式会社JPR 取締役(獣医師)
大学卒業後、個人病院・イオンペットを経て株式会社JPRへ。2006年より15年間人材採用に従事し、月約100名の獣医師・動物看護師・トリマー・総合職との面談、面接を実施。年間約600名の獣医学生と交流を深める他、大学での特別講師も務める。

規模が大きくなってきた今の課題

生田目 最近、色々な企業をみてきて、スタッフが企業を支える意識を持つこと、そしてチームワークで仕事を進めることは、改めて企業発展に欠かせないなと感じています。我々プリモ動物病院も現在8病院まで増え、スタッフの数も増えました。対飼い主様、病院スタッフ間、または運営側と病院間で発生するトラブルなどは、組織が大きくなるとやはりどこでも直面する問題でしょうか。
布村 そうですね。スタッフの数が増えれば、飼い主様含め周囲とのやり取りも多く発生してきます。そのようなやり取りが増えるほど、ちょっとしたボタンの掛け違いが、大きな問題・トラブルに発展することもあります。トラブルのレベルは大小さまざまですが、いずれも自分たちで解決していくことが求められるので、それに対応できるスキルを伸ばすことは、スタッフ育成の中でも重要事項だと感じています。
生田目 人は問題にぶつかると、どうしてもその場では自分のやり方で対処しようとしてしまいます。昨今、医療も進歩しており問題が複雑化している中で、その場しのぎの対処をしてしまうと、また同じ問題を繰り返してしまう恐れがあります。問題解決に導く共通のスキルを個人個人が身につけることによって、会社として組織の運営、維持、発展は成り立っていくのではないでしょうか。本社スタッフ・病院スタッフの様子をみていると、だいたいの問題やトラブルの根本的原因は、コミュニケーションレベルの差ではないかと思います。
布村 私もそう思います。上手に話をまとめられる人もいれば、ちょっとした一言で相手との認識のズレが生じてしまう人もいる。質問の仕方一つとっても、答えやすい質問をする人もいれば、相手に不快な印象を与える質問をする人など、伝え方や相手の捉え方によってさまざまです。そう考えると、コミュニケーションはとても重要な育成課題だと感じます。

コミュニケーションはレベルが違うと衝突が起こる

生田目 一言にコミュニケーションといっても、そこにはどんな要素が含まれているのでしょうか?
布村 コミュニケーションには、対応力、意思伝達、状況理解、他者理解など様々な要素が含まれると考えています。今は、そこにレベルの差が発生してしまっていると感じます。飼い主様に対しての質問力・対応力もコミュニケーションレベルの差で、問題を解決できるか、大きな問題に発展してしまうかが変わってくるなと。些細な問題から病院の信用や信頼を失うことになりかねませんからね。一般企業でも病院でも同じことですが、確実に成長する組織は、どこも同じレベルの問題解決力や対応力がついているなと思います。
生田目 規模が大きくなるにつれ、人によって差が出るのではなく、皆が平均的に高水準のコミュニケーションレベルになるよう、しっかりと教えていく環境がとても重要ですね。病院の場合、学術や技術の育成にどうしても意識がいってしまいがちですが、コミュニケーションレベルをあげることによって、学んできた学術・技術の部分をしっかりと飼い主様や他のスタッフへ伝えられるようになりますよね。同じレベルにすることによって、病院間での症例の共有やスタッフ間での情報伝達がスムーズに行われるでしょうし、病院業務の運営に関しても滞ることがないですよね。
布村 そうですね。コミュニケーションレベルの高水準化によって、飼い主様にはより信頼してもらえる動物病院に、そして働くスタッフには、チームとして補い合いお互いに高め合う、そんな動物病院にしていきたいと思っています。

院長合宿によるビジネススキル研修の実施

生田目 医療現場においてのビジネススキルとはどのようなものを指しますか?
布村 学術・技術を活かす土台となる力ですかね。土台がしっかりしていないと、その上にどれだけ積んだとしても崩れてしまいますから。組織の全スタッフが同じレベルの問題解決力を持つこと。さらに、自分の役職に応じた管理能力も必要になります。院長たちは、自分の病院のトップとして運営責任を有していて、そのトップの判断軸がずれているとその後の発展は難しくなってしまう。そのために、院長合宿というかたちでまずは院長からビジネススキルの研修をすることにしました。
【第一部】ELT(Effortless Thinking)を理解する
【第二部】院長リーダーシップに関する9つの質問
【第三部】 事業管理力の構成要素とMGRリーダーシップ基礎
【第四部】MGR リーダーシップの5つの要素
研修では以上の4 部構成で行い、院長たちには各院に合わせて各々が考えるよう伝えています。
生田目 年末に実施した院長合宿ですね。獣医療技術の研修ではなく、問題解決・事業管理に必要な共通スキルや知識として、院長たちに敢えて運営視点の研修を行うのは、とても面白いと思います。業務スキルをしっかり学べば、時間もストレスもすべてがなくなり、業務の効率化が図れる、「1+1 は2 以上」になりますよね。また、研修内容にあった、客観的な目で“構造”をみること。引き出しの多さを求めるのではなく、引き出しを開けるタイミングを知ること。そして強く依存するのではなく大きな視野で柔軟に対応するということ。これは、仕事をしていく上で、どんな職業でも必要なことだと話を聞いて改めて思いました。
布村 ビジネススキル研修と聞くと、動物病院には関係ないのではないかと思われがちですが、本当は働く上で必ず身につけなければならないスキルなんです。

院長から全スタッフに広がるプロフェッショナルビジネス

生田目 今回の院長合宿は、とても有意義だなと感じましたが、今後院長以外にもそういった教育・育成を広げていく予定ですか?
布村 もちろんです。院長や限られたスタッフに限定して行うのではなく、スタッフ・総合職・管理職から経営者まで全ての会社スタッフに行いたいと思います。このスキルはプリモだけで役立つものではなく、一人一人が生活していく上でも、とても役立つスキルだと思っています。プリモでは、全スタッフが同じレベルで企業の理念を理解し意識する、そんなプロフェッショナルな人材の育成を目指したいです。
生田目 まさにプロフェッショナルビジネスですね。これからさらに成長し、発展させていくために、育成の面から“人材”を“人財”へとかえていきたいですね。

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