TOP JPRを語る 会社による病院経営の必要性 〈Part1〉

会社による病院経営の必要性 〈Part1〉

藤田 隆久氏 :エキスパート・リンク株式会社 代表取締役/株式会社JPR 監査役。学生起業家として活動後、大学院在学中に中小企業診断士試験に合格。その後経営コンサルティング会社勤務を経て独立。主としてサービス産業の事業展開支援及び経営コンサルティング業務を行いつつ、国や自治体、経済団体において起業・ベンチャー創出支援、大学や大学院等において実践的な人材育成に携わる他、金融機関や事業会社の社外役員・顧問にも就任。横浜国立大学大学院経営学研究科修士課程修了(MBA)。

命を預かる業種の組織化で重要なのは顧客に安全安心を提供すること

生田目 今までプリモ動物病院は動物病院にも経営が必要だという考え方で経営と診療(診断)を分離し、さらに分離した上で必要なところを統合するという考え方でやってきました。
藤田氏 生田目社長がプリモ動物病院を創業した2003年当時は、動物病院業界は事業規模で言えばまだまだ法人化していない、個人病院が多かったですよね。
生田目 はい、確かにそうでした。動物病院は「診療の責任者」「経営の責任者」「その事業の所有者」の三つをひとりでやっているという形態が大半でしたから。ところで藤田さんは職業柄、今までいろんな業界や業種をご覧になっていたと思います。動物病院の類似業種でチェーン展開をしている所が増えてきている中で、例えば、「チェーンで経営しているところ」と「個人で経営しているところ」を比較した時に、その違いはありますか?
藤田氏 そうですね、例えば歯科医院の例でいうと、一医院でやっているところと数店舗あるいは数十店舗でやっているところの違いははっきりしています。個人の歯科医師はそもそもインフォームドコンセントがほとんどありません。その結果、高額治療になってしまったり、本当なら1回で終わるところを何回も通院させられたり。一方でチェーン化され組織化されている歯科医院は概ね、初回来院時にインフォームドコンセントを行い、治療方針を提案しています。費用はどれくらいかかるのか、治療に保険適用されるのか自由診療なのかをきちんと説明をして、患者さんに情報を公開します。それは今後、他業種にしても必要になってくるでしょう。
生田目 もちろん、動物病院にとっても必要であるということですね。
藤田氏 国家資格者の事業にありがちなのが、情報は先生の言う事を鵜吞みにするしかないという面です。しかも患者さんは不満を感じても、他院と比較すらできないし不満をいうところもありません。僕はそんなケースを多く見てきました。歯科医院でも動物病院でも共通することは『安全安心を提供すること』。特に動物病院の医療過誤の問題は、ひとりだけで診察している獣医師に任せて良いのか甚だ疑問ですね。
生田目 動物病院を組織でやっているところの特徴は、安全安心を提供できるというところでそれが今後はますます重要になってくるということですね。
藤田氏 はい、そうですね。他の産業と比べてみた時に、今は動物病院業界の発展という過渡期にきているのではないかなと思っています。

動物病院業界も旧態依然とした習慣を打破する必要がある

生田目 プリモ動物病院を創業した当時、飼い主さんに情報が伝わりやすくするために、いわゆるコミュニケーションの意味でのPRやマーケティングをすることを決して良しとしない風潮がありました。他の専門サービス業の世界でも、そんな風潮を感じたことはありましたか。
藤田氏 ありますね。例えば広告規制が未だにある 弁護士業界や、ある業界団体では暗黙の了解でエリア以外の営業をしてはいけないとか。とは言えすでに弁護士の世界では、弁護士ドットコムという会社が創業して株式上場しています。きちんと組織化してさらに社会的認知 を得た結果、その旧態依然とした習慣を打破するといったイノベーションが起きていますね。
生田目 動物病院の業界でも、もっと既存の規制を打破する必要がありそうですか。
藤田氏 そうですね。イノベーションを起こすのは『よそ者か馬鹿者か若者か』というくらいで、なかなか業界内からは起きにくい部分があります。とは言えプリモ動物病院のような事例もあり、きちっと組織・集団化していくというのは、その業界が近代化することで、歴史的に裏付けられています。そういった意味で、動物病院業界はトレンドになっていくことでしょうね。
生田目 ちょうど今、JPRでは新入社員研修をやっている最中です。2週間かけて専門の講師による研修を行いますが、これも組織だからこそできることですね。
藤田氏 それはもちろん、そうですね。
生田目 新入社員教育も含めて、今後は組織化して物事を進めていかなければ、できないことがどんどん増えていくと考えています。例えば顧客との関係でいえば、クレームも個人経営の獣医師であればその対応をひとりでやらなければいけない。その負担は相当重いと思われますが、組織であれば分業ができます。
藤田氏 確かに組織の中であれば、獣医師は治療に専念できますね。クレーム対応はバックオフィスが担当し、さらに法務や会計、マーケティングなどもスタッフの得意分野を活かして仕事を行えばよい。要は役割分担ですね、今風で言えばワークシェアですか。
生田目 プリモ動物病院では専門のチームが部署ごとに機能しています。よって獣医師は治療に専念できるので、品質も担保できています。
藤田氏 しかも組織だと、キャリアの多様性が経験できる良さもあります。最初に動物病院に着任した後も、いろんな選択肢があるという風に。例えば本部に行くのかあるいは現場だけやりたいのか、スーパーバイザーやマネージャーをやりたいのかなど。キャリアの多様性が選べるというのが、イコール人生の多様性という意味での選択ができると。そこに企業の意味、グループの意味があるのかなと考えます。

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